022 履きやすさより歩きやすさ、元気の芽です

歳を重ねることで足の形が変化して機能が衰えてきたときに、足の機能を靴で補う工夫をご存知でしょうか。

ちょっとした落とし穴にはまらないためには、「履きやすさより歩きやすさ」を意識することが役立ちます。「履きやすさ」と「歩きやすさ」を区別して意識してくださいね。

ここでの「履きやすさ」は「歩きやすさ」を含む言葉ではなく、「脱いだり履いたりがしやすい」という意味の「履きやすさ」です。「履きやすさ」は脱ぎ履きのしやすさと歩きやすさの両方の意味を含めて使われますが、ここでは「脱ぎ履きのしやすさ」の意味と思ってください。そうするだけで、靴のいろいろなことが見えてきます。

外来に来られた患者さんの中で、たまに靴のかかと部分を踏んで履いている方がいます。かかとを踏んで履くとスリッパのようにとても脱ぎ履きはしやすくなります。しかし、スリッパで公園を散歩したり、買い物に行ってウロウロしたりすると、足が疲れるのではないでしょうか?

靴のかかとを踏んで履くと脱ぎ履きはしやすいですが、歩きにくくなります。かかとを踏んでいなくても、脱ぎ履きしやすくするために、紐のない緩めの靴を履いたり、紐靴でも紐を緩めて履くことは、靴の中で足が動いて擦れたりぶつかったりして足に負担がかかり長時間歩けない原因になっています。しかし、ちょっと歩いた際に歩きにくいなあと気づくことはあまりありません。これが落とし穴です。

実は、脱ぎ履きしやすくゆるい靴を履いて歩くと、足が疲れたり、足裏にたこができたり、靴擦れしたり、いろいろな足のトラブルの原因となっています。「履きやすさ(脱ぎ履きのしやすさ)」と「歩きやすさ」は両立しにくいのです。

例えばフィギュアスケートの選手、ラグビー選手、陸上選手、などアスリートとよばれる方は、靴を履くのに時間をかけています。きちんと履くことで最高のパフォーマンスを行うことができるからです。鍛え上げられたアスリートでも、もし靴紐が緩んだりするとスケートで転倒したり、トップスピードで走れなかったりします。実は一般の方が歩く際にも同じようなことがおこっています。

歩く機会を減らさないようにしたい方は、「脱ぎ履きのしやすさ」で靴を選ぶのではなく、「歩きやすさ」を求めて靴を選んでください。そのために、まずは「履きやすさ(脱ぎ履きのしやすさ)」と「歩きやすさ」をきちんと区別して言葉を意識してくださいね。

「履きやすさ」より「歩きやすさ」、言葉の使い方も意識することで理解が広がり元気の芽に繋がります。

次回も履きものについてお話いたします。